浅野:昨年は「物流2024年問題」が目前に迫っていることで注目され、その中でも「人材不足」の問題が取り上げられていることが多い印象でした。
早﨑社長の中で、2023年を一言で表すとしたら何になりますか?
早﨑:「時代が変わる年」ですね。
昨年はコロナウイルスの蔓延の名残があったり、ロシアとウクライナの戦争が始まったりと、世の中が大きく変わった時期の一つだったと思います。
コロナウイルスの蔓延で外出ができない世界になって数年が経ちましたが、みんなが上手く対応したことで、「対面で会うこと」から「オンラインで会う」ことが当たり前になりました。
コロナウイルスが落ち着いた後の世界を考えたときに、Webの打ち合わせなどの良いものは残っていき、なんとなくやっていた非効率的なものを戻さなくてよくなったことで、無駄がそぎ落とされたように感じます。
また、2023年と言えば、ChatGPTなどのAIの台頭ですよね。
1990年代に「インターネットバブル」が起こり、検索エンジンが当たり前になったり、ポケベルからガラケーへ、そしてスマートフォンが登場し、もはや今はガラケーを見ることの方が珍しくなりました。
未来から過去を見ると、その起点がいつだったのか見ることができますが、そのタイミングにいる時には気づけません。
ですが、2023年はコロナウイルスとAIの台頭により、未来から見ると「分岐点」だと感じるのではないかと思います。
特に、物流業界では、「2024年問題」が控えていますから、業界的にも「分岐点」となるのではないでしょうか。
浅野:アフターコロナやAIは、2023年を象徴する言葉かもしれませんね。
早﨑社長の中で、昨年の一番印象的な出来事を挙げるとしたら、何になりますか?
早﨑:個人的には昨年の1月に登壇した、ハワイでのプレゼンが印象的でした。
イーソーコグループにとって、海外でプレゼンするのは過去に無かったですし、もちろん自分も海外というアウェイな状況で、慣れない英語でスピーチをするという初めての挑戦だったので、未来のある若手にその姿を見せられて良かったと思います。
また、弊社のWebチームが頑張ってLIVE中継を実現できたことも、大きな成果でした。
今回はテレビのような感覚で中継を見る状態でしたが、今後はVRのように3Dで、実際に隣にいるわけではないけど隣で聞いているような感覚で参加できる世界になっていくと思うので、その実感がわいたように感じます。
また、海外の方に物流不動産ビジネスをアピールできた絶好の機会でしたので、海外展開する上できっかけにしていきたいです。
浅野:私はオンラインでその映像を拝見しましたが、自分の会社の代表がまさか海外でスピーチするとは夢にも思っていなかったので、広報としてとても感動したことを覚えています。
ただ、私は英語は苦手なので、聞き取ることには苦労しましたが…(笑)。
逆に海外でスピーチをしてみて、難しかったことはありますか?
早﨑:やはり言葉の壁ですね。
プレゼンは共感を生むのが大事だと考えていますので、日本であればその場の雰囲気に合わせてアレンジをかけたり、アドリブで話すことで、納得感を持ってもらえるように調整できます。
しかし、私は英語が堪能ではないので、普段のボキャブラリーが使えない上に、準備した原稿を読むことがメインになってしまったことが反省だと感じています。
ただ、プレゼンの内容を作る上で協力してもらった人や英語の先生に助けていただいたので、資料として良いものができました。
次の機会があったら活かしたいですね。
浅野:慣れない土地、知らない外国の方の前で、英語で話すというだけで大変だと思いますが、早﨑社長らしい堂々とした姿が私は印象的でした。本当にお疲れ様でした。
他に印象的だった出来事はありますか?
早﨑:それでいうと、12月に行われた物流不動産協同組合主催のセミナーですね。
登壇してくださった衆議院議員の今村雅弘先生は、現在の総理大臣・岸田文雄さんから指名を受けて物流調査会会長を担っている方で、セミナー当時は会期中の大変お忙しい時期でした。
その方がセミナーの最後までいてくださったことは、2024年問題の重さや物流不動産ビジネスの重要性を感じられた出来事でした。
浅野:中小物流企業の協力が、2024年問題で崩れる危機にある現在の物流を守るには欠かせないと、そう感じさせられるセミナーでした。
運営側で参加させてもらいましたが、お話を聞けて、私も良かったなと思います!
逆に、2023年に挑戦したかったけどできなかったことはありますか?
早﨑:業務や倉庫現場の「DX化」ですかね。
物流や不動産のテック系の会社の方々とディスカッションしたり、プロダクトを持っている方々のサービスを体験できるようなところに踏み込む場が持てれば良かったなと思います。
DX系の倉庫を集めた展示会を企画するとか、分科会や研究会を立ち上げて、深堀していくなどですね。
当グループは極端にどっかに偏っていないのが強みです。
業界の垣根を超えられるからこそ、各業界の強みや良いところを集めて、掛け合わせた画期的なサービスを作っていくポテンシャルはあると確信していますので、今後確実にポイントとなる「DX化」に踏み込んだ部分を突き詰めてみたいですね。
また、イーソーコドットコム(以下、当社)はグループの中でも「人財」がテーマなので、新卒採用や育成に力を入れています。
新卒社員を含むZ世代はビジネス経験が少ないですが、デジタルネイティブなので、新しいITシステムや動画などに対峙したとき、素直に受け入れられる姿勢があります。
最新のDXのプロダクトに触る機会を増やせば、会社で導入する際にスムーズに進められると思っています。
2024年問題も迫るなか、物流業界の人材不足は大きな課題になっています。
中小物流企業の中では、若い人たちを採用しても教育する時間も土壌もないと、諦める会社も少なくありません。
ですので弊社ではより多くの新卒社員を採用し、DXを使えるように教育・輩出していくことで、その課題に寄り添えればと考えています。
ポストコロナでWebミーティングやテレワークが進んだので、移動時間が無くなって生産性が上がったと考えると、現在のビジネスの環境は無駄なことを嫌う今の若い世代に相性がいいと思います。
効率化を図っていくのにも、DX化は重要だと思います。
浅野:弊社でも電子回覧や電子契約を導入したりと、ペーパーレス化を進めていますが、デメリットはあれど、やはり便利だなと感じることのほうが多いように思います。
DX化によって、もっと業務効率化を図り、違うことに挑戦していけるようになれば、より物流不動産ビジネスを盛り上げていけそうですね!
さて、昨年の質問は最後になりますが、2023年で課題に感じたことはありますか?
早﨑:今は当社の人財事業が課題ですね。
現代は少子高齢化が進んだ社会なので、どの業界でも人材が不足している現状ですが、物流業界は特に深刻だと思います。
物の流れ、いわゆる物流が無くなることは無いですが、「物流2024年問題」で浮き彫りになった課題がこのまま残り続けると、今の物流のサービスを保つことすらできなくなる可能性があります。
物流のサービス品質が落ちれば、日常生活にも影響が出るので、物流の重要度が増していくと考えています。
変革には人材の確保が必要不可欠で、どの会社でも取り組んでいかなくてはならない壁になります。
弊社でも採用は課題になりつつあり、最近は学生とのカジュアル面談を始めました。
直接学生とかかわっていく中で感じるのは、思った以上に世代格差による価値感の違いが浮き彫りになっていることです。
今の世代の子たちはテレビを見ないことが日常だったり、Web授業が中心の学校体制など、私たちにとって当たり前の「学校に行き、家族と過ごす」という時間の過ごし方が、当たり前ではなくなっています。
さらに、スマホ一本で世界の絶景を動画で見たり、海外の有識者のセミナーを聞いたり、映画やドラマを視聴したりなど、世界のどんなコンテンツでも触れられ、それぞれが好きな時間・世界を過ごすことができる世界ですから、価値観や考え方が違うのは当然だと思います。
今後は膨大な情報がキュレーションされて、AIに考えてもらう風潮が当たり前になると、AIとどう共生していくのかなど、勉強の仕方や意義が変わっていき、企業や会社、社員の在り方も大きく変わっていくと考えています。
大きな話で終身雇用制度が崩れつつありますが、フリーランス化や副業、働き方がフレキシブルになっていく流れは止まらないでしょう。
今後は出来る人に仕事が集まり、その人も仕事を選べる世界観になると考えると、会社も雇い主・雇われている方というシンプルな関係ではなく、プロジェクトごとに契約するなど、複雑化していきます。
そういう働き方に対応していくためには、物流不動産ユーティリティープレイヤーの在り方も変わっていかなければなりません。
理想とする世界観としては、社内にいる・いないに関わらず、各自がそれぞれの場所で仕事をして、一つのプロジェクトに対して適切な人たちでチームを形成し、一緒に成果を上げていくことです。
それは定年を迎えた方でも、物流不動産関係の会社にいない、雇用していない方でもいいと思っています。
物流不動産ビジネスを推進していく中で、文化を作るには一定の教育も必要なので今後も雇用はやめないですが、結果的にはお客様の役に立てて、社会に貢献していければ良いので、雇用にこだわらない形も模索していけたらと思います。
浅野:2024年といえば、先ほどから何度も挙がっている「物流2024年問題」ですよね。
早﨑社長の中でイーソーコドットコムの2024年は、どのようなテーマで事業を展開する予定ですか?
早﨑:当社としてはぶれずに、「人財」と「DX」を変わらず取り組んでいきます。
強いて特徴づけるとしたら、「地方展開」と「海外展開」の2軸です。
当グループは物流不動産ビジネスを全国展開で取り扱っており、ネットワークを持っていますが、育てた人財を地方に輩出するというよりも、地場の物流不動産プレイヤーがその土地で頑張っているのが現状です。
今年は、今の本社のシステムを東京以外の主要都市で構築することが目標で、その第1号を「イーソーコ関西」で実現させる予定です。
全国転勤が前提ではない人材を地方に行かせる、ということは簡単にはできないので、今まで以上にどのように採用していくのか、考えていかなくてはならないステージになりました。
一から採用した人財を関東内以外で輩出していくのは、今回が初めての試みとなります。
昨年パッケージ化したオムニチャネル営業や、リモートで商談に同席するシステムをイーソーコのストラテジーチーム(営業事務)が構築し直して、一定の成果が出てきております。
今回はその仕組みをイーソーコ関西にも持ち込み、テクノロジーを活用した形で関西のお客様の役に立つことが直近の目標です。
また、少子高齢化で人口が減りつつある現代で、国内市場がいきなり拡大することはない以上、インバウンド・海外の収入も得つつ、海外へ日本の良いものを出していくということに力を入れている企業が増えつつあります。
我々も、日本で成果の出た今のシステムを海外にもっていくという可能性もあると考え、海外から日本に参入したいお客様に向けた会社設立を目指しています。
代表には18卒・藤田が就任予定で、私自身の目標でもあった海外進出も夢ではない段階に進みつつあります。
その成功には、リモートワークが鍵になると考えています。
どこで働いてもオフィスと同じように働けて、家の近くのコワーキングスペースなどに出勤、退勤して、好きな場所で働ける環境になれば、日本に来れないなどの物理的な壁を越えられることはもちろんのこと、育児や介護を理由に通常のように働けない人財の取り込みも見込めます。
今年はリモートワークを推進していきたいですね。
浅野:結婚・育児は女性のキャリアステージにおいて避けれない壁でもありますから、同じ女性としてはリモートワークが進むことで、やる気のある人が働ける環境にできたら素敵な世界だなと思いますね!
さて、今までお話を聞いていた中でも「人財採用」がやはり大きなキーワードかと思いますが、早﨑社長の中で2024年で特に力を入れていきたいことは何ですか?
早﨑:初めての挑戦となる、関西での採用活動です。
物流業界にとって物流2024年問題は国も中止するほどの問題で、その中でも人材確保は大きな課題です。
そのためには物流のやりがいや魅力、物流不動産ビジネスの面白さなどを、学生にもっとアピールし、なおかつ魅力を感じて入ってもらえる業界にしていかないといけないと思います。
今年も目標は10~15名とし、関西の採用イベントにも出展しながら、地元で働く環境づくりやそこで働きたい学生にアプローチもかけていきます。
特に今回、イーソーコ関西に共同出資する「シューワ株式会社」という力のある会社と組むので、より多くの学生に魅力を伝えていくことに注力していければと思います。
浅野:新しい取り組みが始まるというのは、ワクワクしますね!
最後に、この記事を読んでいる方に向けて、2024年の意気込みをお願いします!
早﨑:当グループの会長・大谷がよく「ピンチはチャンス」と言っていますが、今年はまさにこの言葉が体現される一年になると思います。
物流2024年問題は「ピンチ」ではあるのですが、同時に変わっていかないと守れない、変革を起こす絶好のチャンスです。
今までは余計なことをしないのが良いと考える企業も、新しいことにチャレンジしていかないと生き残れない世界へと変わっていくでしょう。
企業の方であればぜひ「シン・物流(物流不動産ビジネス)」を一緒にできたら嬉しいですし、学生や社会人の方へは今年はチャンスの時期で、ぜひ興味を持っていただけたら弊社まで問い合わせをしてほしいと思います。
浅野:ありがとうございました!